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eスポーツのプロも本物のアスリートであると科学が示す

翻訳元:Deutsche Welle

ドイツ体育大学ケルンの科学者がeスポーツ選手の研究を行い、その結果に驚いた。
彼らも "通常の" アスリートと同様の肉体的負荷に晒されていることを発見したのだ。


(引用元:Deutsche Welle



 Ingo Froböse教授がeスポーツ選手の研究を始めたのは5年前。これによりドイツ体育大学ケルンにおける怪我の予防とリハビリテーションの専門家である教授は、eスポーツ選手の研究を行った初めての科学者として、この分野のパイオニアのような存在となった。これ以前に、eスポーツのプロフェッショナルが要求されることや、競技のために必要なトレーニングの種類、大会の間どういった類の負荷に晒されているのか等について詳しく調べたものはいない。研究の結果はFroböse教授をひどく驚かせた。

(引用元:Deutsche Welle

 「私たちは特に、要求される運動能力と彼らの能力に目を見張りました」 と教授は語る。そして、「eスポーツ選手はキーボードとマウスの操作のために、実に1分間に400もの動作を行います。これは平均的な人の4倍にもなります。全てはばらばらな動作で、両手は同時に動かされ、また脳の様々な部分も同時に使われます」とつけ加えた。

 これは、手と視覚の高度な協調が求められる卓球の選手にすら全く見られた事のない水準の負荷だ。



マラソン選手並の脈拍数


 eスポーツ選手が大会で戦う姿は、素人目にはただ適当にキーボードを叩き、適当にマウスを動かしているように映るに違いないが、Froböse教授はその考えを否定する。そして、Counter StrikeやLeague of Legendsのような戦略的なゲームは極めて複雑であり、相手に打ち勝つ為には運動能力に加え、高水準な戦術理解が求められると指摘する。

 さらなる発見を求め、ドイツ体育大学ケルンの科学者たちは、eスポーツ選手の精神に要求されるものを明確にすることを目的として、ストレスホルモン・コルチゾール(訳註:ストレスを感じた際に分泌されるホルモン。詳細はこちらを確認するテストを行った。

 Froböse教授は「分泌されたコルチゾールの量は、レーシングドライバーのそれと同じレベルでした」と語る。「これに併せ、脈拍は時として1分間に160から180という早さにもなり、これはマラソンと言えるほど速いペースでのランニングの際のものに匹敵します。運動能力が関係していることは言うまでもありません。ですので、eスポーツは他の殆どのスポーツと同じか、ことによるとそれ以上に様々なことが要求されると考えています」



より良いトレーニングと栄養摂取は必須


 しかしながら、多くの選手は求められることを理解していないように見える。というのも、彼らは栄養摂取やトレーニング方法を適宜調整することを怠っているからだ。長年にわたる研究は、殆どの選手が大会に向けてプロフェッショナルな準備をしていないことを明らかにしている。

 Froböse教授は「健康状態・運動能力という点に関して言えば、多くの被験者は単に普通の人であり、心配になります。まったく健康的とは言えません」と話す。「例えば、彼らは肩と首の部分全体を強化する運動を怠っています。もしこれを行えば、競技において極めて重要である腕の細かな運動能力を改善することでしょう」

 Rene Pinkeraもこれを怠っていた1人だ。SK Gamingに所属している22歳のPinkeraは、アナハイム・BlizzCon 2015で行われたWorld of Warcraft世界大会の優勝者だ。彼のトレーニング方法は、他の3人のチームメイトと同じく、コンピューターでゲームをするというだけだ。

「短いウォーミングアップをしたり、いくつか腕や手のストレッチをしますよ。プレイする前にね、そういうものですよ」とPinkeraは言う。「最低でも1日6時間、時には12時間プレイすることもありますね」

 こういったことがIngo Froböseを不安にしている。なぜならPinkeraは決して例外ではないからだ。彼の知る限り、大部分のeスポーツのプロのトレーニング方法は、コンピューターの前で毎日何時間も費やすことで成り立っている。教授は、彼らは身体をリラックスさせる運動とともに、定期的な身体トレーニングも行うべきだと考えている。



20代中盤で限界に達する


「行われるべきはストレスのサイクル、つまり、負荷のかかった後で休憩を設けることであり、そうすることで選手は大会期間中の疲労を回復し乗り越えることが出来るはずです」と教授は語る。「他の要素としては適切な栄養の摂取もあります」。eスポーツ選手の食事も他のアスリートの食事と同様で、例えば脳の血液循環を増す朝鮮人参などの栄養補助食品を含むようなものであるべきなのだ。

BlizzCon 2015のWorld of Warcraft世界大会で優勝したRene Pinkera(左から2番目)
(引用元:Deutsche Welle

 Rene Pinkeraもまた、これまで参加した多数の大会で見た多くのeスポーツ選手は、自分たちが何を口にしているのか十分な注意を払っていないことに気付いていた。

 Pinkeraは「選手たちが砂糖をたくさん含んだエナジードリンクやジュースを持っているのをよく目にしますよね、何を食べてるのか気にしてない人たちを」と話す。

「糖分は避けるようにして、まずはバナナを食べます、でなければシリアルバーですね。飲むのは水にしておけば間違いありません」

 Froböse教授は、プロフェッショナルなトレーニング方法とより良い栄養摂取が、多くのeスポーツのプロが直面している問題をひとつ解決しうると確信している。eスポーツの選手寿命は概してとても短く、20代中盤に終わりを迎える。反射神経が衰え始め、より若い選手が有利になるからだ。だが教授は、トレーニングとより良い栄養摂取を行えば、Rene Pinkeraのような選手もキャリアを4、5年伸ばすことが出来るのではと考えている。しかしながらPinkeraは、すでにゲームの後の人生の準備を始めている — 大学でコンピューターサイエンスを勉強しているのだ。



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