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はじめてのCapcom Pro Tour観戦ガイド Vol. 4




CPT ストV シーズン2レビュー


(引用元:Diario Libre



バランス調整と追加キャラ

 現在の格ゲーでは、発売後にバランス調整を繰り返して長く遊ばれることが多くなっています。ストVにおいてはCPTが行なわれるため、基本的にシーズンオフの冬の間にバランス調整(バージョンアップ)がされていくことになるようです。

 S1で強かったのはナッシュ(インフィルやボンちゃんが使用)リュウ(ときどやウメハラが使用)ガイル(ナックルが使用)レインボー・ミカ(ふ〜ど、ナックルが使用)春麗(リキ姐が使用)といったキャラ。しかしS1→S2での調整でこれらのキャラはみな弱体化されます。
 それでもガイルはかなりの強キャラ、ミカも中位〜上位にとどまっています。しかしながら致命的な弱体化を喰らったのがナッシュ、リュウ、春麗で、トッププレイヤーから「戦えない」と言われるほど弱くされてしまいます。
 かくしてS1では多くみられたナッシュ使い、リュウ使い、春麗使いは激減し、インフィル、ときど、ウメハラもみなキャラ変更することになります。

 ただし、ときどだけは調整がされる前から、追加キャラとして発表済みで、ストIVシリーズで使っていた愛着のある「豪鬼(ごうき)」というキャラに変えると公言した上でのキャラ変更です。その時点では豪鬼が強いか弱いかも全くわからない状態での決意でした。

 そして2017年3月、S2が開幕します。



怪物Punk

 ストVに突如現れた「最強プレイヤー」、それがアメリカのPunkです。
 Punkが備えていたのは、しっかりとした研究(攻略と呼ばれます)があった上での、圧倒的な反射神経と操作精度です。それはまさに「化け物」と呼ぶに相応しい、人間離れしたものでした。そしてその圧倒的な力で優勝の山を築いていきます。
 この時Punkはわずか18〜19歳、これ以前には殆ど名前の知られていなかった、全く新しい絶対王者の誕生でした。

Punk
(引用元:Panda Global

 余談ですが、中国のXiao Hai(シャオハイ)というプレイヤーも凄まじい反射神経で有名なのですが、シャオハイは波があり、KOFという別のゲームも並行してプレイしているためか「攻略が粗い」と言われたりもします。
 しかし、最高にノっている時のシャオハイ(通称「スーパーシャオハイ」)は、Punk以上のモノを見せてくれます。




ザ・ラストナッシュ

 5月に入りCPTを騒がせたのは "ザ・ラストナッシュ"「ボンちゃん」(「ちゃん」までがプレイヤーネーム)でした。
 先述のとおり、ナッシュはインフィルも使っていたキャラで、ボンちゃんはS1の途中からナッシュを使っていたのですが、S2になり大きく弱体化され、多くのプレイヤーが「これじゃ勝てない」とナッシュを辞めていきました。
 そんな中、ボンちゃんだけはナッシュにこだわり続けます

 実はボンちゃん、S1では中々良い結果を残せず、最後まで世界中のCPTを周り続ける(通称「ドサまわり」)も、結局CC 2016に出場することは出来ませんでした。そこへきてのナッシュの大きな弱体化だったため、泣き面に蜂とでもいうような状況でのナッシュ継続の決断でした。
 しかし、ボンちゃんはなんとそのナッシュで「3大会連続優勝」という衝撃の結果を残します。しかもその内の1つは、通常の大会以上に強豪ひしめくプレミア大会。
 ボンちゃんは、"ザ・ラストナッシュ" として賞賛を浴びます。

 それでもボンちゃんはCC 2017出場が実質確定した後で、「ナッシュを辞める」という決断をすることになります。「これ以上ナッシュで伸ばすところが無い」ことが理由だと語っています。

 またまた余談ですが、ボンちゃんはストIVシリーズの時から世界的に名の知れた有名プレイヤーで、ボンちゃんはPunkの憧れのプレイヤーらしいのですが、そんなボンちゃんが選んだ新しいメインキャラは、Punkと同じ「かりん」です。



ときどのEvo優勝

 そしてEvo 2017、すでに語ったとおり、ときどが優勝します。
 ときどのS2のここまでの成績も悪いものではありませんでしたが、S1に比べれば低く、そもそも優勝予想が「Punk一択」という状態でした。本当に衝撃的な優勝でした。
 そして、とにかくカッコよかった。Vol. 1でも触れましたが、本当に「ときどは変わった」と思わせてくれ、「圧倒的主人公感」が出ていました。
 ときどはこの後も好成績を残し続けます。

 また、ここでときどが優勝したことで豪鬼の強さが広く知られるところとなり、S2最強キャラの1人と考えらるようになりました。

 一方、苦杯を喫することになったPunkですが、いつもニヤニヤ不敵な笑みを浮かべている彼もEvoでは真剣な顔を見せることが多く、ときどに決勝で敗れた後、壇上で悔しさのあまり涙を流します
 それまでの「絶対的強者」の像からは想像もつかないPunkのこの姿もまた格ゲーファンの心を打ちました。



ときど優勝の裏にあったもう1つのドラマ

 しかも、ときどEvo 2017優勝の裏にはもう1つのドラマがありました。

 実はEvoの少し前から、ときどの長年のプレイヤー仲間である「マゴ」さんが深刻な、本当に深刻なスランプに陥っていたのです。普段の練習などでは「めちゃくちゃ強い」にも関わらず、とにかく大会で勝てない。信じられないぐらい低い成績が続いていました。
 迎えたEvo、マゴさんはやはり早々に敗退してしまいます。
 そして、ときどの劇的な優勝。

 優勝後、ときどは壇上のインタビューで「Punkの使う『かりん』というキャラに対しての対策をどうやって練習したのか」を聞かれます。

ときど「同じくかりんを使う友達がいて、いつも彼と一緒に練習しています。彼は、自分の研究の内容も包み隠さず教えてくれるんです。」

- 秘密のパートナー?

ときど「秘密ではありません - 僕にはマゴがいます。」


"I have Mago."

 実は、マゴさんもPunkと同じく「かりん」を使っており(格ゲーにおいて同じキャラを使うというのは大きな意味を持ちます)、彼らはよく一緒に練習をしているのです。
 いつもはふざけあっている2人の絆がこの大舞台で垣間見えたことが全世界の格ゲーファンを感動させました(と思っています)。



マゴさんの復活

 格ゲー界の愛されキャラ、マゴさん

 今述べた通り、マゴさんは5月から激しいスランプに陥ります。そのスランプの間、そのキャラもあって、イジられ倒します。しかしスランプがあまりに酷く、あまりに長かった為、ついには本気で心配する声も出始めます。
 しかし、ときどのEvo優勝と "I have Mago." が影響したのか、夏の終わりから徐々に成績を上げ、9月のオンライン大会ではついに2位になり、優勝こそ無いもののその後も安定して良い結果を出し続け、無事CC 2017出場を確定させ、みんなを安心させます。

マゴさんの笑顔(ただし2016年)
(引用元:Capcom Pro Tour公式サイト

 ちなみになぜかマゴさんは「さん付け」が定着しており、配信のチャット欄でも、大体のプレイヤーは呼び捨てや愛称ですが、マゴさんはマゴさん、なぜか海外の人たちからも "Mago-san" と呼ばれたりしています



王者の辞退

 最終予選の一枠を除いたCC出場者31名も確定し、本番まで2週間を切った11/27、突然予想もしなかった内容のツイートを目にしました。
 前年度王者ナックルが、CC 2017には出場しないだろうというのです。
 理由は現在も不明のままですが、結局ナックルの辞退はそのまま確定、規定によりCC 2016で2位だったリキ姐が代わりに出場することになりました。

 これは実はCCに出場するほかのプレイヤーにも大きな影響があります。というのも、大会で戦うことになるプレイヤーがわかっている場合、対策を考えて臨むことが当たり前だからです。
 つまり、ナックルが辞退したことで1回戦の相手が変わり、対策の内容を変えなければならなくなったのです。



最終予選

 CC出場32名最後の1枠を巡る最終予選ですが、強豪プレイヤーひしめく中、最終的に日本の社会人プロゲーマー・ネモと前年度Evo覇者である韓国のインフィルが決勝に上がってきました。
 ネモは、その実力が世界トップレベルであることは間違いないのですが、社会人として仕事をしながらの兼業プロ活動である為、十分な数の大会をまわれず、CPTランキングは最終的に59位でツアーを終えています。最終予選の本命と見られていました。
 一方のインフィルですが、S1前半は誰もが認める最強プレイヤーでしたが、S2はキャラ選びにも苦しみ、最終CPTランキングは44位でした。
 ネモの使うのはユリアンというリーチ・突進力に優れ、爆発力もあるキャラ。最強ではないもののかなりの強キャラと目されていたキャラ。そしてインフィルがメインにしているのはジュリメナトといういずれもテクニカルで弱いとみなされていたキャラです。

 試合は、インフィルがネモを翻弄する立ち回りで先行します。が、ネモは徐々に対応していき、チャンスをきっちりものにしてダメージの差で押し切るようになります。
 結果、下馬評通りネモの優勝でした。



"RD"

 ついに迎えた2017年の締めくくり、Capcom Cup 2017
 やはり注目が集まるのはときどPunkです。最終予選を優勝し勢いづくネモも注目されていました。

 CC 2017は波乱で幕を開けます。初戦でPunkがネモに破れたのです。
 大会は「ダブルエリミネーション」という2回負けたら敗退という形式のため、Punkにはまだチャンスは残されています。ですが、第1試合目での敗北は優勝を非常に難しくするものでした。
 逆に、Punkに勝ったことでネモの優勝が現実感を増してきました。
 しかし、なんとそのネモは次の試合で完敗します。相手はウメハラでした。これを見てウメハラのCC初優勝を夢見たファンは少なくないはずです。
 また、初戦でいきなりの敗北を喫してしまったPunkですが、その後Top 16まで駒を進めるも日本の若手プロもけに破れ大会から敗退します。しかしそのもけも、最後はネモに負けて敗退します。

 そんな中、ときどは無敗のままウィナーズファイナル(決勝戦の1つ前)に進みます
 ウィナーズファイナルは手に汗握る大接戦となり、最終セットの最終ラウンドまでもつれるも、ときどは何とか勝利をものにしてファンの期待どおり無敗のまま決勝まで登り詰めます
 そして決勝戦、相手はウィナーズファイナルの時と同じプレイヤーでした。彼はときどに負けた後、ネモを下して決勝にたどり着きます

 ときどは無敗だった為、相手は3本先取を2回勝たなければならない一方でときどは1回勝てば優勝、しかもウィナーズファイナルで勝利している相手です。
 ときどは2本先取した後、あと1R取れば優勝という状況で、一切ダメージを喰わらないまま相手の体力を残り1割まで減らします。

 しかし、優勝を目前にしたこのラウンド、ときどはここから大逆転を喫してしまいます。

 ときどの相手が使うのはバーディーというパワーキャラで、最強クラスからは少し劣ると思われていたキャラでした。
 彼はこのバーディーを使い、ときど豪鬼のプレッシャーを意に介さないかのように前に歩き、逆にプレッシャーをかけ続けます
 大会前の注目度は低く、誰もここまで勝ち上がるとは優勝していなかったプレイヤーですが、ウメハラやネモを含む世界のトッププレイヤー達を退けここまで上がってきていました。しかも、17歳という異常な若さ、そして、これまで格闘ゲームの世界では殆ど注目されてこなかった国の出身です。

 その名は "MenaRD"(メナRD)。"RD" とはメナの出身国、「ドミニカ共和国」のことです。
 大逆転によって敗退の危機を凌いだ後、ときどが1本取る間にメナは6本取るという破竹の勢いを見せ優勝します。


優勝が決定し、ドミニカ共和国の仲間たちが歓喜の輪を作る。

 誰も予想していなかったこの結果への驚きと、次の1年に予感されるまた新たな展開への期待と不安の中、世界はオフシーズンの静寂に入ります。









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