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はじめてのCapcom Cup観戦ガイド Vol. 5(2018 ver.)




CPT シーズン3レビュー





バランス調整と追加システム

 S2で最強と考えられていたキャラは豪鬼、そしてラシードという風を操るキャラです。S3ではバランス調整に加え新システムの追加があり、大きく勢力図が変わります。
 何より特筆すべきはスピードタイプのキャミィ、超パワー型キャラ・アビゲイル、そして遠距離特化キャラ・メナトの強化です。

 キャミィは元々シンプルな強さを持っておりS2でも強キャラに数えられていましたが、S3で強化されたことで使用人口が爆発的に増加。しかしながらシンプルなだけに "違いを出す" のが難しいようで、トップレベルでの数はそう多いわけではありません。
 アビゲイルはとてもピーキーなキャラで、こういった重鈍なキャラ(デカキャラ)は伝統的に強キャラになることは少なかったのですが、S3になり大幅強化され、世界各地で "デカキャラ使い" 達が活躍することになります。

右がアビゲイル。左のやられ役は主人公のたかしリュウ。

 メナトは水晶を操りリーチの長い技で戦うキャラなのですが、追加の必殺技をはじめとする強化を得て一気に最強クラスに躍り出ました。しかしながら、難しい操作を要求されることもありメナトで活躍するプレイヤーの数は限られています。



雪辱を期す王者

 CPT序盤で2大会連覇したのがEVO 2017覇者ときど。しかも、アメリカで行われたELeague(イーリーグ)という招待制大会(CPTとは無関係)も優勝し、賞金15万ドル(約1600万円)を獲得しています。
 獣道弐でウメハラに惨敗したときどは、「またふさわしいだけの結果を出してもう1度ウメさんに挑戦したい」と言っています。
 ときどは早々にCC出場を確定させ、最終的に3度のプレミア優勝と2度のランキング優勝、準優勝も多数という驚異的な成績を残し、2位に約1500Pもの大差をつけて4431Pでポイントランキング1位を獲得しています。



リーサルの藤村

 しかし、今シーズンの "最恐" プレイヤーといえば藤村でしょう。
 S3の藤村は女子高生忍者いぶきを操り、その "リーサル" 力で圧倒しています。
 リーサルとは、体力が少なくなった時(状況によるが大体残り2〜4割)にこれを当てれば倒しきれるという技(連続技)のことで、藤村はVトリガー(巨大手裏剣)を使ったリーサルのバリエーションが凄まじく、「世界中で藤村しかリーサルが視えていない」「藤村がVトリガーを発動したら相手は死ぬ」と言われることもある程。
 11月にフランスで行われたRed Bull Kumiteという招待制の大会(CPTとは無関係)でも優勝、現世界最強との呼び声も高いプレイヤーで、CC優勝候補の1人です。


Red Bull Kumite優勝インタビュー
「誰が僕を倒せるの?」




"X"

 CPT前半戦の締めとなるEVO、ときど藤村に加え、圧倒的なオフェンス能力で初のプレミア優勝を果たし勢いを増す韓国のキャミィ使いNLや、直前のプレミアで藤村を2度倒して優勝したウメハラなどに注目が集まっていました。
 しかしTop 8に残ったのは、日本のガチくん、ドミニカ共和国のCaba(カバ)、アメリカのCOOL KIDという、優勝候補とはあまり考えられていなかったプレイヤーが3名いる一方でNLもウメハラもいないというやや以外な面子でした。
 そんな中、ときどはTop 8の初戦でふ〜どと死闘を繰り広げた末に敗北、ルーザーズトーナメント(1回負けたプレイヤー達で構成されるブロック。ウィナーズは無敗プレイヤーのみで構成される)に落とされてしまいます。それでもその後は危なげなく勝ち上がり、ルーザーズファイナルではふ〜どと再び対峙、先ほどとはうって変わった落ち着いた立ち回りで勝利します。

 そのときどから最終的に3本連取して驚きの優勝を遂げたのがイギリスのProblem X(プロブレム・エックス)
 欧州プレイヤーのビッグタイトル獲得は、これまでフランス人プレイヤーLuffy(ルフィ)のEVO 2014優勝のみ。特にイギリス勢は歓喜に沸き、プロブレムXを祝福しました。
 もしプロブレムXがCCを優勝すれば、欧州プレイヤーとしては初の偉業となります。


優勝したProblem Xと狂喜するイギリス勢




ファミリーマン

 EVO後はじめてのプレミア大会は、台湾で行われました。
 そこで、他のプレイヤーを全く寄せ付けないまま優勝したのが日本最年長(というかおそらく世界最年長)プロ格闘ゲーマーのsako(サコ)さん。
 sakoさんが使うのはメナトというキャラで、特に、難しい操作を要求されるVトリガー "ジェフティの知恵" を誰も見たことがないような高いレベルで操り、ときどすらも2戦合計5-0という圧倒的な内容で下しての優勝でした。

 しかし、それよりも印象的だったのが、sakoさんにとってストVで初めてのビッグタイトル獲得を、マネージャーである妻・akikiさん、そして娘のりんかちゃんと一緒に喜ぶ姿。
 歳を取り、結婚して子供を持っても強いままのsakoさんのその姿は、"ファミリーマン" として讃えられます。


壇上でりんかちゃんと共に祝福を受け、感涙するakikiさんの頭を撫でるsakoさん、
そして壇上を降りたりんかちゃんを膝に乗せるマゴさん

 sakoさんはこの後もう一度プレミア優勝をするなど活躍を続け、3年連続となるCC出場を決めています。



シルバーコレクター

 CPTがストVで行われるようになった2016年シーズン以来、安定して好成績を残し続けるもどうしても優勝ができない、いわゆる "シルバーコレクター" に甘んじているプレイヤーが、ついに8月に香港で行われたプレミア大会で優勝を果たします。
 それが日本のふ〜どで、ここまで準優勝回数は実に8回、優勝は0(CPTに限る)という異様な成績で、本人自身「さすがに何かある」と言っていたほど。アメリカのジャスティン・ウォンに「特定の場面でリスクを犯さないことはみんな知ってるよ」という意味の指摘をされたり、ウメハラからアドバイスをもらったりした結果、徐々に時折無茶なプレイも見せるようになった末の優勝でした。
 CCにも出場します。



"THIS IS STREET FIGHTER"

 優勝には直接関係ないのですが、9月にアメリカで行われたSoCal Regionals(通称ソーカル)で、触れない訳にはいかないぐらい感動的な出来事が起きます。
 主人公は2人 — アメリカのクリス・タタリアン(通称クリスT)と日本のももちです。

 クリスTは、シーズン1でキャリアハイといっていい活躍を見せ、Capcom Cupにも出場しますが、シーズン2は使用キャラであるケンの弱体化もあって低迷、ときども使う強キャラ・豪鬼も試すなどするも奮わず、苦しみます。しかし、当時チームメイトだったウメハラに相談してからプレイスタイルに変化が見えはじめていました。
 対するももちもケン使い、それもストIV時代から知られた世界トップのケン使い。クリスTからすれば憧れのプレイヤーです。しかし、クリスT同様ケンの弱体化に苦しみ、色々なキャラを試した結果おもにコーリンというキャラを使っていました。

 この2人がSoCalのTop 8で相まみえ、クリスTのケンに対し、なんとももちもケンを選びます
 試合前に拳を交わす2人、試合中に無邪気な笑顔を見せるクリスT、そして勝ったのは — クリスT。
 まるでストリートファイターシリーズのリュウとケンが現実になったような光景でした。

クリスTのツイート




2人の "Bird"

 CPTにはアジア・北米・中南米・ヨーロッパの4地域それぞれに1名ずつの地域枠が割り当てられているのですが、その地域枠を決めるのが地域決勝大会で、シーズン3最初の地域決勝大会が行われたのはヨーロッパでした。
 欧州地域決勝大会で、EVO覇者プロブレムXやフランスのルフィなどを抑え優勝したのが、アラブ首長国連邦(UAE)のAngry Birdでした。同じUAEのプレイヤーでRed BullアスリートのBig Birdの影に隠れがちだったAngry Birdですが、使用人口の少ないテクニカルキャラ是空(ぜくう) を高い練度で操り世界を驚かせました。
 さらに盟友Big Birdもアジア最後の大会となるプレミアで優勝し、何とかCapcom Cup出場を決めます



ブラジル4兄弟

 CPTもシーズン最終盤に入り、グローバルポイントでのCC出場ライン際の攻防はかつてない激戦になります。
 そんな中、日本に爆誕したのが "ブラジル4兄弟" — ベテラン投げキャラ使い・板橋ザンギエフ(通称板ザン)マゴさん、"クレイジーラスカル" ハイタニ、そして今年プロになったばかりで初のCC出場を目指すストーム久保
 正に当落戦上にいる彼らは、ポイントを求めはるか地球の裏側に位置する魔境・南米はブラジルまで遠征するという悲壮な決意をした漢たちなのです。

 先鞭をつけたのは板ザン、彼はブラジル→カナダ→ブラジルと1週間ごとに南米と北米を往復する旅に出て、見事3つのうち最初の大会で優勝を果たします。
 続くカナダのプレミア大会、4兄弟全員が集結します。結果は、マゴさんが+130P、ハイタニが+100P、板ザンが+40P、ストーム久保が+10P。ストーム久保以外の3人はまずまずの結果です。
 そしてブラジル4兄弟最終章 — 並み居る中南米の猛者たちを千切っては投げ、4人ともTop 8まで勝ち進みます。しかし、板ザンとストーム久保の行く手を阻んだのはパナマのDoomsnake(ドゥームスネイク)。しかも使用キャラは弱いと評判のスペイン忍者・バルログ。未だ、格ゲーの世界では侮られがちな中南米ですが — やはり、魔境
 それでも決勝まで駒を進めたのはブラジル4兄弟のマゴさんとハイタニ。骨肉の争いとなったこの試合、制したのはハイタニでした。

 かくしてこの遠征で得たポイントは、ハイタニが+800P(この時点でCC確定)、マゴさんが+400P(同じく確定)、板ザンが+320P(ほぼ確定)、ストーム久保が+110P(未確定)ストーム久保のみが焦りを胸に帰国の途に就きます
 次の大会は、2週間後に行われるアメリカのプレミア — CPT最後の大会です。



最後の戦い

 CPT最後の大会、注目が集まったのは、当落戦上のストーム久保、"バイオレンス紳士" ネモ、大幅にポイントを伸ばせばCC出場を決められる "台湾の英雄" GamerBee(ゲーマービー、通称ゲマビ)やネモのチームメイト竹内ジョン君あたりでした。
 また、ライン際にいるにも関わらずこの大会に参加することが出来ず、結果によってCC出場の可否が決まってしまうため気が気でない男が1人いました — それがクリスT
 そして最後の希望に賭けるこうしたプレイヤー達を "介錯" しにはるばる日本からやって来た男も1人 — ときどです。

 CPT最後の大会だけあって、序盤からいたるところで死闘が繰り広げられていきます。
 ゲマビはTop 32前で敗退しCC出場確定ならず、ネモはTop 16で敗退するもギリギリCC出場確定となります。そしてストーム久保もTop 16でときどに "介錯" されルーザーズに落ちてしまいます。落ちた先で待っていたのは、CC出場ほぼ確定ながら念には念を入れて遠征して来たブラジル4兄弟の兄・板橋ザンギエフでした。
 またしてもブラジル4兄弟の身内争いですが、勝者はストーム久保。兄の屍を超えてTop 8まで勝ち進んだ久保は、この段階でCC出場を確定させます。
 ジョン君もまた、ウィナーズTop 8でときどに "介錯" されてしまいますが、それでもあと2試合勝てばCC出場権を獲得できるところまで来ていました。ルーザーズに落ちた先で待っていたのはストーム久保。今度は自分が心を鬼にして "介錯" したかった久保ですが、ジョン君は勢いのあるプレイで勝利をもぎ取ります。CC出場まで、あと1勝。ジョン君のCC出場権を賭けた一戦の相手、それは思わぬ伏兵・アメリカの若手CJ Truth(シージェイ・トゥルース)でした。
 CJは昨シーズンから活躍を見せてはいましたが、まだビッグタイトルは獲れておらず、もし優勝すれば念願のビッグタイトル、そして土壇場でのCC出場権獲得です。
 2人とも何がなんでも勝ちたいこの試合、ジョン君が1本目を取り先行しますがその後はCJが流れをつかみ3本連取し勝利、ジョン君は惜しくもCC出場権を得ることが出来ませんでした。
 勝利したCJですが最後に大きな壁が残されていました。"介錯人" ときどを倒し優勝しなければCC出場権を得ることは出来ないのです。
 しかし、決勝のCJは目の覚めるようなプレイを連発、ときどを相手に一歩も引かず、一度は流れを掴みかけたときどをねじ伏せ優勝し、自身初となるCC出場を決めます

 このドラマの裏で「Fucking」をTwitterで連呼していたのがクリスTです。クリスTも当落戦上におり、ざっくり言えばすでにCC出場を決めているプレイヤーが勝って、自分よりポイントランキングで下にいるプレイヤーが負ければCC出場出来る、といった具合でした。
 そして、最終的に北米地域枠を決める北米地域決勝の結果に委ねられることになります。出場8名のうち、グローバルポイントでCC出場権を獲得している4名が優勝すればクリスTがCC出場となります。つまり、単純計算でいうと確率は50%
 以下は大会中のクリスTのツイートの一部。




喜びすぎてファッキンタマタマを打っちゃうクリスT


何故か突如元気がなくなるクリスT



 北米地域決勝を優勝したのはグローバルポイントでCC出場権を獲得していたPunk。こうしてクリスTはファッキンめでたくCC出場確定となります。



 実はCC出場32名のうち現在決まっているのは31名だけで、最後の1枠は決勝大会の前日に行われる当日最終予選というトーナメントの優勝者になります。この "一発切符" を賭けた戦いも激戦必至で、次からはこの最終予選の注目プレイヤー、そして決勝大会Capcom Cupの1回戦の組み合わせとともにプレイヤーを紹介していきたいと思います。









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